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白魚の陣十郎―江戸隠密水軍(2)

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二宮隆雄さんの『江戸隠密水軍 白魚の陣十郎 (ベスト時代文庫)』を読んでいたら、江戸の町が作られていく過程が折々で綴られたいた。作品の舞台設定は寛永二年(1625)、三代将軍家光の時代。家康が入府したばかりの頃(天正八年)の江戸城は朽ち果てていて、土塁の下まで日比谷入江の波が打ち寄せていたという。

徳川家臣団三万と人夫二万五千人が入夫して以来、日比谷の海が、外濠を掘った土で埋め立てられ、八丁堀から新橋までが陸地となり、小高い神田山が削られて隅田川西岸の沼地が埋め立てられていく。やがて、隅田川の川向こうに広がる本所(はじめは本庄と呼ばれた)に家が建ち始めるが、深川は萱野で住む人の姿がまばらだった。

下総の行徳塩を江戸城に運び込むために、行徳口から利根川河口まで小名木川が掘られ、その土で深川の萱野が埋め立てられる。もともと深川には地名がなかったが、鷹狩りでこの地をを訪れた家康が、海辺の萱野の開墾を始めた摂津牢人深川八郎右衛門の名前を取って深川と名付けたという。

本所と深川は、江戸を舞台とした時代小説を楽しむ上で欠かせない場所である。人情味厚いその土地柄を描いた多くの名作がある。今も両国から門前仲町まで、ぶらりと歩くと随所に江戸情緒を感じられる。

深川に興味を持ったら、江東区深川江戸資料館がおすすめだ。

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