GWということで、読書のペースがやや上り、竹内大さんの『欠落ち―公事師政吉御用控 (小学館文庫)』を読了。『神隠し (小学館文庫)』で第一回小学館文庫小説賞佳作入選し、同作品の主人公・公事師の政吉が活躍する捕物シリーズ第3弾だ。
町奉行は町廻り同心が岡っ引きとか目明しと称する者を手先に使うことを禁じていたという。江戸の治安を守り犯罪人を捕縛する町廻り同心は、南北両奉行所を合わせて二十四人しかいない。町方だけで人口五十万を超える江戸の治安を、二十四人でまかなうことは不可能な話。そこで、町廻り同心が臨時の手先という名目で岡っ引きを使った。
同じようなグレーゾーンにある稼業が公事師(または出入師ともいう)がある。公事(訴訟)やその内済(示談)の手伝いを生業とする者で、非公認の司法書士に近い存在だろうか。町奉行、勘定奉行は公事に第三者がかかわることを禁じていて、かかわったことがわかれば処罰される。
政吉は、岡っ引きと公事師を兼業するという設定。すなわち刑事と民事の両方の事件に対応できるわけだ。政吉は、公事師の仕事では狡知をめぐらし、体を張って掛け合い、話をまとめ、一日二朱の手間賃を稼ぐ。そのハードボイルドの仕事ぶりがなかなか面白く、作品の魅力になっている。
公事宿を舞台にした時代小説では、澤田ふじ子さんの『公事宿事件書留帳』シリーズが傑作だ。また、佐藤雅美さんの『恵比寿屋喜兵衛手控え (講談社文庫)』もぜひ、押さえておきたい。
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