『御町見役うずら伝右衛門・町あるき (講談社文庫)』を読んでいたら、同田貫という名の刀が登場した。主人公のうずら伝右衛門が、彼を一途に慕う尾張藩の別式女・百合とともに、敵地に討ち入る際に、使用する武器である。
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すらりと鞘を払った、身幅の広い、伝右衛門には似合わぬ豪刀である。
「小山上野介、肥後玉名に移っては正国。慶長九年上々の作、刃渡り二尺四寸五分か。居合いには少々長すぎるな」
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「いか利刀といえども、折れては詮方ございません。百合も今宵は同じ肥後鍛冶清国でございます。
刀の柄を撫でた。
二人の刀は世に言う同田貫だ。名は加藤清正が好んだ頑丈一点張り。甲冑を叩き割るために作られた戦国の実用刀である。
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(『御町見役うずら伝右衛門・町あるき (講談社文庫)』P.277)
作者の東郷隆さんは、近世の武器に造詣が深く、『戦国名刀伝』や『運命の剣 のきばしら』(競演・オムニバス)など、刀をテーマにした優れた作品がある。本書にも「次郎太刀の行方」という話が収録されている。
- 作者: 東郷隆
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/02/01
- メディア: 文庫
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