公開初日の第1回上映に合わせて、新宿ビレッジ1に出かける。5分前に劇場に入るが満員で最前列に座る。こんな場所で観るのは初めてで見上げるような位置で、戸惑う。あんまり映画を観ないほうなので、これほど、映画の始まりを楽しみにしたのは、ホント久しぶりだ。
司馬遼太郎に捧ぐ―
のクレジットで映画は始まる。原作を大切にしている姿勢がうかがえて何となく安心する。
とにかく、コンピュータ・グラフィックスを駆使した映像が素晴らしい。CGはNHK大河ドラマでも最近よく見かけるが、劇場のスクリーンだとその効果はすごい。これを昔のようにセットで作ろうとすると、制作費はバブル級になるであろう。CGのおかげで今まであきらめていたシーンも可能になった。時代劇に新時代到来か。実は映画を観終わった後、これを使えば、白石一郎さんの『海狼伝』も映画化できるんじゃないかと思ってしまった。
この映画を観ようと思ったのは、キャスティングがいいからだ。主演の4人(中井貴一さん、鶴田真由さん、上川隆也さん、葉月里緒菜さん)がイメージ通りでよかった。それぞれおいしいシーンが用意されている。アメリカで活躍中の俳優マコ・イワマツさんが豊臣秀吉を演じているのは必見。うんうん、秀吉ってこんな感じだ。ほかにも名優が脇を固めているが、掘り出し物は、五奉行の一人、前田玄以役の津村鷹志さんだ。不思議な存在感と、体の動きの見事さのアンバランスなところが大きなスクリーンの中で光っていた。
秀吉は高野詣で太閤能を上演するが、その場面で観世榮夫さんが能を舞うのが豪華。豪華といえば、舞台美術家の朝倉摂さんが担当する衣装も安土桃山時代の雰囲気を伝えるキラビヤカさだ。作品全体が贅沢に思えてくる。東宝では、この後に『雨あがる』『どら平太』と時代劇が続くが、そのトップバッターにふさわしい華々しいオープニングになっている。この作品なら、海外にも通用するのではないだろうか。
STORY 天正九年(1581)、織田信長が伊賀を攻め、五万の軍勢が伊賀全土を焼き払い、大虐殺を行った…。それから十年、時は太閤秀吉の天下。 生き残りの伊賀忍者・葛籠重蔵のもとへ、かつての師匠・下柘植次郎左衛門がやってきて、太閤秀吉暗殺の任務を与えた…。 |
(1999.11.05・理流)
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